数学の概念

部分分数分解の解き方:検算付きの4例

2026年10月23日3分で読めます
部分分数分解の解き方:検算付きの4例

有理式は、そのままでは積分しにくく見えても、部分分数に分けると対数の積分になることがあります。例えば (3x+1)/(x2−x−2)(3x+1)/(x^2-x-2) です。難しいのは係数を計算する前に必要な項をすべて含む形を決めることです。項が足りなければ、後で連立方程式を頑張っても直りません。

ここでは異なる一次因子、重複する一次因子、実数上で既約な二次因子、最初に多項式の割り算を要する式を、それぞれ独自の数値例で扱います。毎回、分解した項を元の分数に足し戻して確認します。次数の条件と因子別の形は OpenStax Calculus 第2巻 §3.4 に基づきます。積分そのものの意味は積分の解説を参照してください。

次数を比べ、分母を因数分解する

まず P(x)/Q(x)P(x)/Q(x) と置きます。部分分数分解の対象は deg⁡P<deg⁡Q\deg P<\deg Q を満たす真分数です。そうでなければ PP を QQ で割り、多項式の商を残して、真分数になった余りを分解します。商を定数係数の中に隠すことはできません。

次に分母 QQ を実数上で因数分解します。因子の形が係数計算前のひな形を決めます。

分母の因子必要な項
異なる一次因子 (x−a)(x-a)A/(x−a)A/(x-a)
重複一次因子 (x−a)m(x-a)^mA1/(x−a)+A2/(x−a)2+⋯+Am/(x−a)mA_1/(x-a)+A_2/(x-a)^2+\cdots+A_m/(x-a)^m
既約二次因子 q(x)q(x)(Bx+C)/q(x)(Bx+C)/q(x)

このひな形は、都合のよい一点だけでなく、許されるすべての xx について成り立つ恒等式です。分母を払った後、係数は二通りの方法を組み合わせて求められます。例1・2のように一次因子の根を代入して項を消す方法と、例3のように両辺を展開して xx の各べきの係数を比較する方法です。根の代入だけで一つの定数がすぐ決まることはありますが、二次因子が残ると、それだけですべての係数比較を省けるとは限りません。数値が出そろっても残りの係数を確認します。例2で項の欠落が分かるのは、短縮した形では全係数を同時に合わせられないからです。代入値の選び方ではなく構造の問題です。普通の値を数個代入して連立方程式を解いた場合も、最後に全 xx に対する恒等式を確認します。完全に通分し直せば一度で検証できます。

既約二次式には実数の一次因子がありません。その上の分子は、解いた結果 B=0B=0 になったとしても、最初は一次式とします。元の分母をゼロにする値も覚えておきましょう。共通の定義域で式が等しくても、元の極で関数が定義されるわけではありません。

例1:異なる一次因子

F(x)=(3x+1)/[(x−2)(x+1)]F(x)=(3x+1)/[(x-2)(x+1)] を分解します。分子の次数は1、分母は2なので割り算は不要です。

3x+1(x−2)(x+1)=Ax−2+Bx+1.\frac{3x+1}{(x-2)(x+1)}=\frac{A}{x-2}+\frac{B}{x+1}.

分母を払うと多項式恒等式 3x+1=A(x+1)+B(x−2)3x+1=A(x+1)+B(x-2) ができます。元の分数では x=2,−1x=2,-1 は除外されますが、この多項式恒等式には代入できます。x=2x=2 から 7=3A7=3A、よって A=7/3A=7/3。x=−1x=-1 から −2=−3B-2=-3B、よって B=2/3B=2/3 です。

最後に足し戻します。

73(x−2)+23(x+1)=7(x+1)+2(x−2)3(x−2)(x+1)=9x+33(x−2)(x+1)=F(x).\frac{7}{3(x-2)}+\frac{2}{3(x+1)} =\frac{7(x+1)+2(x-2)}{3(x-2)(x+1)} =\frac{9x+3}{3(x-2)(x+1)}=F(x).

等号は x≠2,−1x\ne2,-1 で成り立ちます。一点で数値が合うだけでは、二つの間違った式が偶然一致する可能性があります。分子全体が多項式として一致することを確認します。

例2:重複因子では両方のべきを入れる

G(x)=(2x+5)/[x(x+1)2]G(x)=(2x+5)/[x(x+1)^2] の (x+1)2(x+1)^2 には、一次と二次の両方の項が必要です。

G(x)=Ax+Bx+1+C(x+1)2.G(x)=\frac{A}{x}+\frac{B}{x+1}+\frac{C}{(x+1)^2}.

x(x+1)2x(x+1)^2 を掛けると 2x+5=A(x+1)2+Bx(x+1)+Cx2x+5=A(x+1)^2+Bx(x+1)+Cx。x=0x=0 で A=5A=5、x=−1x=-1 で 3=−C3=-C、つまり C=−3C=-3 です。x2x^2 の係数から A+B=0A+B=0、よって B=−5B=-5。別の確認として xx の係数は 2A+B+C=10−5−3=22A+B+C=10-5-3=2 です。

三つの分子を足し戻すと

5(x+1)2−5x(x+1)−3x=5x2+10x+5−5x2−5x−3x=2x+5.5(x+1)^2-5x(x+1)-3x =5x^2+10x+5-5x^2-5x-3x=2x+5.

したがって G(x)=5/x−5/(x+1)−3/(x+1)2G(x)=5/x-5/(x+1)-3/(x+1)^2、ただし x≠0,−1x\ne0,-1。意図的な誤った形 A/x+B/(x+1)2A/x+B/(x+1)^2 では一次の項がありません。共通分母の分子は A(x+1)2+BxA(x+1)^2+Bx となり、x2x^2 の係数は A=0A=0、定数項は A=5A=5 を要求します。この矛盾は計算の難しさではなく項の欠落を示します。

例3:既約二次因子の上は一次式

H(x)=(2x2+3x+5)/[(x−1)(x2+1)]H(x)=(2x^2+3x+5)/[(x-1)(x^2+1)] では、x2+1x^2+1 に実数根がありません。したがって

H(x)=Ax−1+Bx+Cx2+1.H(x)=\frac{A}{x-1}+\frac{Bx+C}{x^2+1}.

分母を払うと 2x2+3x+5=A(x2+1)+(Bx+C)(x−1)2x^2+3x+5=A(x^2+1)+(Bx+C)(x-1)。x=1x=1 から 10=2A10=2A、A=5A=5。係数比較で A+B=2A+B=2、B=−3B=-3、さらに −B+C=3-B+C=3、C=0C=0。定数項も A−C=5A-C=5 で合います。C=0C=0 は計算結果であり、最初から分子を定数と決める理由ではありません。

検算は 5(x2+1)−3x(x−1)=2x2+3x+55(x^2+1)-3x(x-1)=2x^2+3x+5。よって H(x)=5/(x−1)−3x/(x2+1)H(x)=5/(x-1)-3x/(x^2+1)、ただし x≠1x\ne1。x2+1x^2+1 の導関数は 2x2x なので、後者は係数を調整して置換積分できます。二次因子が重複するなら、各べきにそれぞれ一次式の分子が必要です。

例4:仮分数は先に割る

J(x)=(x2+4x+5)/(x2−1)J(x)=(x^2+4x+5)/(x^2-1) では分子・分母とも次数2です。多項式の割り算、あるいは分母を一回引くことで

J(x)=1+4x+6x2−1=1+4x+6(x−1)(x+1).J(x)=1+\frac{4x+6}{x^2-1}=1+\frac{4x+6}{(x-1)(x+1)}.

余りだけを分解します。4x+6=A(x+1)+B(x−1)4x+6=A(x+1)+B(x-1) とすると、x=1x=1 から 10=2A10=2A、A=5A=5。x=−1x=-1 から 2=−2B2=-2B、B=−1B=-1。つまり

J(x)=1+5x−1−1x+1,x≠±1.J(x)=1+\frac5{x-1}-\frac1{x+1},\qquad x\ne\pm1.

商の1も含めて元に戻します。真分数部分の和は [5(x+1)−(x−1)]/(x2−1)=(4x+6)/(x2−1)[5(x+1)-(x-1)]/(x^2-1)=(4x+6)/(x^2-1)。1を加えると分子は x2−1+4x+6=x2+4x+5x^2-1+4x+6=x^2+4x+5 になります。1を落とすと余りだけは正しくても、元の分数は再現しません。

積分し、微分して確かめる

例3を x=1x=1 で分かれた各区間で項ごとに積分すると

∫H(x) dx=5ln⁡∣x−1∣−32ln⁡(x2+1)+C.\int H(x)\,dx =5\ln|x-1|-\frac32\ln(x^2+1)+C.

微分すれば 5/(x−1)−(3/2)(2x)/(x2+1)=5/(x−1)−3x/(x2+1)=H(x)5/(x-1)-(3/2)(2x)/(x^2+1)=5/(x-1)-3x/(x^2+1)=H(x)。x−1x-1 には絶対値が必要ですが、実数 xx で x2+1x^2+1 は常に正です。離れた区間では積分定数 CC が異なって構いません。微分による最終確認は、分解が正しくても積分中に2を落としたような誤りを見つけます。

別の技法を組み合わせる場合は部分積分の例も参考になります。ラプラス変換の逆変換でも、有理式を分解することがあります。Math Zenでは因数分解と微分を個別に練習し、その後で長い積分に組み合わせられます。

次の問題に進む前の確認

次数比較、必要なら割り算、分母の因数分解、各べきに必要な項の記入、係数の決定、全体の足し戻し、という順番を守りましょう。四つの例では形が違っても、最後の検算は共通です。合わなければ係数計算より先に形を疑います。解けた連立方程式でも欠けた項は補えません。

除外点の近くの振る舞いも手がかりです。例1では x−2x-2 の項が x=2x=2 付近の発散を作ります。重複因子は一次の項だけより強く発散する場合があります。ただし、一つの極の近くを見るだけでは全係数の誤りは分からないため、代数的な足し戻しが最終的な証明です。

よくある質問

いつ多項式の割り算を先にしますか?
分子の次数が分母の次数以上のときです。割り算の商を残し、余りからできた真分数だけを部分分数分解します。
重複因子のすべてのべきが必要なのはなぜですか?
(x-a)^m には分母が x-a から (x-a)^m までの項が必要です。一つ抜くと係数の多項式恒等式が成立しない場合があります。
分解の答えはどう検算しますか?
分母を元に戻して分子を整理します。選んだ一点だけでなく、多項式として元の分子と一致する必要があります。

実際に解いてみる

関連記事

積分を直感的に理解する(面積、累積、そして微積分のもう半分)

積分を直感的に理解する(面積、累積、そして微積分のもう半分)

微分が「いまどれくらいの速さで変化しているのか」を問うものなら、積分は「ここまでにどれだけ積み重なったか」を問うものです。怖い記法を脇に置いて、積分とは本当のところ何なのかを、リーマン和から基本定理まで絵で理解できる順序で紹介します。

部分積分の例題:uの選び方から答えの検算まで

部分積分の例題:uの選び方から答えの検算まで

部分積分を例題で学びます。積の微分法則から公式を導き、uとdvを選ぶ目的を確認。指数関数との積、対数関数、反復する三角関数との積、上下限のある定積分を順に解き、各答えを微分して検算します。置換積分が適する場合、LIATEは定理ではなく目安であることも説明。練習問題三題で、符号、係数、積分定数、定義域まで点検できます。

ラプラス変換を直観的に理解する(微積分を代数計算に変える魔法)

ラプラス変換を直観的に理解する(微積分を代数計算に変える魔法)

ラプラス変換は、時間領域の複雑な微分方程式をs領域の平易な代数方程式へと写像し、部分分数分解と変換表を用いて瞬時に解を導く強力な数学ツールです。s平面の減衰と角振動数の共鳴、部分積分による微分の掛け算化、初期値が第1行目で自然に組み込まれる仕組みを詳解。単振動の具体例と解法の急所をわかりやすく解説します。