分散と標準偏差の違い:同じデータで計算を最後まで解説

二つのグループがパズルを解くのにかかる平均時間は、どちらも4分です。最初のグループでは全員が4分で終わります。もう一方では半数が2分、残りの半数が6分です。平均は同じでも、後者の時間は散らばっています。分散と標準偏差は、この違いを数値で表します。
どちらも平均値の周りの散らばりを測りますが、表す尺度が異なります。分散の単位は元の単位の二乗です。標準偏差は分散の平方根を取り、元の単位に戻します。データが分単位なら、分散は分の二乗、標準偏差は分です。また、データが母集団全体なのか、一部を取り出した標本なのかによって計算方法が変わります。
ここでは一つのデータを最後まで計算します。先に平均値、中央値、分布の全体像を知りたい場合は、統計の入門記事をご覧ください。
平均からの偏差を求める
パズルを解く8回の試行に、次の分数がかかったとします。
合計は分なので、平均は分です。次に各時間から5を引きます。偏差は次の通りです。
負の偏差は平均より速く、正の偏差は平均より遅いことを示します。算術平均からの偏差は、必ず合計がゼロになります。したがって、そのまま平均を取れば、大きく異なる値を含むデータでも散らばりがゼロになってしまいます。これでは役に立ちません。各偏差を二乗すると負の値がなくなり、大きなずれほど強く反映されます。NISTの散らばりに関する解説もこの点を説明しています。
8個の偏差を二乗した結果を表にすると、次のようになります。
| 時間、分 | 5分からの偏差、分 | 偏差の二乗、分² |
|---|---|---|
| 2 | -3 | 9 |
| 4 | -1 | 1 |
| 4 | -1 | 1 |
| 4 | -1 | 1 |
| 5 | 0 | 0 |
| 5 | 0 | 0 |
| 7 | 2 | 4 |
| 9 | 4 | 16 |
最後の列を合計すると分²です。この合計が、分散と標準偏差の両方の出発点です。観測した時間はここから変わりません。何で割るかは、その8個が何を表すかによって決まります。
これが母集団全体の場合
8回の試行が、関心のある小さな大会で行われたすべての試行だと考えてください。見えていない大きな集団を推定するのではなく、この集団全体を記述します。二乗偏差の合計を個数で割ります。
これが母分散で、記号はです。次に平方根を取ります。
これが母標準偏差です。平方根を取っても、平均との差の絶対値を平均した数になるわけではありません。偏差を二乗してまとめた後で、単位と数値の尺度を元に戻します。OpenStaxの散らばりに関する節でも、同じ母集団の記号と分母が使われています。
ここで2分とは何でしょうか。平均5分を中心に、試行時間がどれだけ散らばるかを分単位で示す尺度です。すべての結果が5分から2分以内に収まるという意味ではありません。実際、この一覧には2分と9分が含まれます。また、ある割合の値が必ずその範囲に入ることも意味しません。そうした割合の規則には、標準偏差の計算だけでなく分布に関する仮定が必要です。
これが標本の場合
今度は、同じ8個の時間がもっと大きな試行の集まりから選ばれたもので、その大きな母集団のばらつきを推定したいとします。観測された平均5分も、この標本から計算した値です。通常の標本分散では、分母にを使います。
標本標準偏差は次の通りです。
同じ合計を8ではなく7で割るため、母集団として計算した場合より少し大きくなります。甘い式と厳しい式を選んでいるわけではありません。8個を集団の全体として記述するのか、8個の観測値でさらに大きな集団の散らばりを推定するのか、問いが違います。OpenStaxのデータ科学の教科書にも両方の式と単位の違いが示されています。
なぜ7なのでしょうか。標本平均を同じ観測値に合わせて計算するので、未知の母平均から測った偏差より、標本内の偏差は小さく見えやすくなります。通常の標本抽出の条件では、で割ることが分散の過小評価を補正します。覚え方として、標本平均を固定すると7個の偏差は自由に変わりますが、8個目は合計をゼロにする値でなければなりません。より深い理由は、標本を繰り返し取ったときの標本分散の振る舞いにあります。ここでは計算する前に母集団か標本かを確認する、という実用的な規則を押さえましょう。
どちらの数値を報告する?
計算に二乗した散らばりが必要な場合や、分散を使う統計の式へ進む場合は分散を使います。元の測定値と比較して散らばりを伝えたいなら標準偏差が便利です。「標準偏差は約2.14分」なら平均5分とすぐ比較できます。「分散は約4.57分²」も数学的には正確ですが、直感的には把握しにくいでしょう。
母集団と標本のどちらかも必ず添えてください。「SD = 2」と「SD = 2.14」は、どちらも同じ8個の時間から出ています。区別がなければ、なぜ違うのか読者には分かりません。電卓にとがあるなら、二つは同じボタンではありません。母集団全体の記述には、標本計算にはを選びます。
単位も重要です。値がセンチメートルなら分散は、標準偏差はセンチメートルです。値が単位のない点数なら、どちらの結果にも単位はありません。両方を「点」と呼んだり、両方を「点の二乗」と呼んだりすると、平方根で何が変わったか分からなくなります。
最大値と最小値の差だけではだめ?
このデータの範囲は分です。最大値と最小値の距離は分かりますが、間にある6個については何も伝えません。2と9をそのままにして中間の値を変えても、範囲は7のままですが、全体の並び方は変わります。分散と標準偏差にはすべての観測値が入るので、中間の変化も結果に反映されます。
その長所には限界もあります。二乗するため、平均から遠い値は大きな影響を持ちます。今回の9分の試行一つだけで分²を占め、合計は分²です。大きなずれが重要なら有用ですが、単一の散らばりの数値を解釈する前にデータを見る必要もあります。NISTも散らばりの尺度を比べる中で、大きな偏差の影響を説明しています。標準偏差があっても、異常な値や偏った分布を見落としてよいわけではありません。
直感を確かめるため、どちらも平均4になる二つの4個のデータ、とを比べます。最初は偏差の二乗がすべてゼロで、標準偏差もゼロです。二つ目では各値が4から2離れているので、偏差の二乗はそれぞれ4です。両方を母集団全体とみなすと、二つ目の分散は4、標準偏差は2です。平均が同じという事実だけでは、この違いが見えません。
よくある計算ミス
データの意味を決める前に割る。 計算の上に「母集団」か「標本」と書きましょう。母集団なら、標本から母分散を推定する通常の標本分散ならを使います。ここを混同すると、一見正しそうな二つの答えが食い違います。
平方根を忘れる。 二乗偏差の合計を分母で割った値は分散です。標準偏差はその平方根です。両方を求める問題なら両方を報告します。
単位を落とす。 二乗偏差の合計と分散の単位は二乗、標準偏差の単位は元のままです。答えの確認にも使えます。
絶対値にした距離の平均と呼ぶ。 それは平均絶対偏差という別の尺度です。標準偏差では先に二乗し、母集団か標本に応じた分母で割り、最後に平方根を取ります。通常は異なる数値になります。
各行ですぐ丸める。 偏差の二乗と分数は、できるだけ正確な形を保ちましょう。この例では、丸めた分散の平方根を使うより、から計算するほうが標本標準偏差を正確に求められます。
表を写さずに練習する
を、4個すべてで一つの母集団だとみなして計算してみましょう。平均は、偏差はなので、偏差の二乗の合計はです。母分散は(単位の二乗)、母標準偏差は(元の単位)です。これら4個を標本とみなすなら、3で割ります。標本分散は、標本標準偏差はです。
最後の値だけを5から9に変えます。計算前に、散らばりが大きくなるか予想しましょう。大きくなりますが、最初から計算し直してください。平均も変わるため、古い偏差表の一行だけは直せません。平均と散らばりを一緒に計算する必要がある理由を確かめる練習です。
一つの表を手で完成できるようになったら、Math Zenの統計の練習も役立ちます。平均を見つけ、正しい分母を選び、答えの単位が妥当か確かめる練習をしましょう。標本と母集団の違いがまだ抽象的に感じられるなら、確率のガイドで、標本からより広い結果について考える理由を説明しています。
よくある質問
分散は常に標準偏差より大きいですか?
いいえ。単位が違うので、大小を直接比べても通常は意味がありません。数値だけを見ると、選んだ単位で分散が1未満なら平方根のほうが大きく、1より大きければ平方根のほうが小さくなります。単位を変えるだけで数値上の比較は変わりますが、データ自体は変わりません。
標準偏差が負になることはありますか?
ありません。偏差の二乗は負にならず、その合計も負になりません。標準偏差に使う平方根も負ではありません。観測値がすべて同じときに限り、ゼロになります。
いつn-1を使いますか?
同じデータから標本平均を計算する、通常の標本分散と標本標準偏差ではを使います。記述したい母集団全体がデータに含まれるならを使います。電卓を操作する前に、問題文を確認してください。
違いを覚える最も簡単な方法は?
分散は偏差を二乗して測る散らばりです。標準偏差はその分散の平方根で、データの元の単位に戻ります。上の例では、偏差の二乗の合計分²から母分散分²、母標準偏差分へと進みました。
よくある質問
- 分散と標準偏差はどう違いますか?
- 母集団の分散は、平均との差を二乗した値の平均です。標本の分散は、二乗した偏差の合計をn-1で割ります。標準偏差は対応する分散の平方根で、元のデータと同じ単位になります。
- 標本分散をn-1で割るのはなぜですか?
- 標本平均も同じデータから推定します。そのため標本を使って母分散を推定するときは、二乗偏差の合計をn-1で割り、通常生じる過小評価を補正します。母集団全体がそろっている場合はNで割ります。
- 標準偏差は平均との差の平均ですか?
- いいえ。偏差を二乗し、適切な分母で割ってから平方根を取ります。絶対値にした距離をそのまま平均するのは平均絶対偏差という別の尺度です。どちらも散らばりを示しますが、値は異なります。

