math-concepts

複素数の極形式:変換・乗算・除算

2026年9月24日2分で読めます
複素数の極形式:変換・乗算・除算

3+3i3+3i は、右へ 3、上へ 3 という住所を表します。同時に、北東という向きと、原点から 323\sqrt{2} という距離も表します。直交形式と極形式が表す数はまったく同じです。ただし、計算しやすい操作が異なります。

加法には直交形式が便利です。極形式では、乗法が二つの普通の動作、拡大と回転に見えます。そのため、見た目には複雑な累乗も、表し方を変えれば短い計算になります。

虚数単位にまだ慣れていないなら、まず虚数の解説を読んでください。ここでは、その次の実践的な段階である変換、計算、答えの確認に焦点を当てます。

絶対値と偏角は一本の矢印を表す

原点から z=a+biz=a+bi へ矢印を引きます。水平方向の成分は aa、垂直方向の成分は bb です。矢印の長さを絶対値と呼び、直角三角形から次のように求めます。

r=z=a2+b2r=|z|=\sqrt{a^2+b^2}

偏角は、実軸の正の向きから反時計回りに測る角 θ\theta です。正の回転は反時計回り、負の回転は時計回りです。一周すれば同じ矢印に戻るので、偏角は一意ではありません。

長さ rr の矢印の水平成分と垂直成分は、rcosθr\cos\thetarsinθr\sin\theta です。これらを代入すると極形式が得られます。

z=r(cosθ+isinθ)z=r(\cos\theta+i\sin\theta)

本によっては rcisθr\operatorname{cis}\theta と書きます。この略記は、括弧内の式そのものを意味します。新しい演算ではなく、短い書き方にすぎません。

ここでは極座標の幾何を使いますが、目的は極曲線を描くことではなく、複素数を計算することです。

象限を失わずに変換する

z=3+3iz=-3+3i を考えます。まず絶対値を求めます。

r=(3)2+32=18=32r=\sqrt{(-3)^2+3^2}=\sqrt{18}=3\sqrt{2}

実部は負、虚部は正なので、矢印は第 II 象限を向きます。水平距離と垂直距離の大きさが等しいため、基準角は π/4\pi/4 です。したがって必要な偏角は 3π/43\pi/4、つまり 135 度です。

3+3i=32(cos3π4+isin3π4)-3+3i=3\sqrt{2}\left(\cos\frac{3\pi}{4}+i\sin\frac{3\pi}{4}\right)

なぜ arctan(b/a)\arctan(b/a) をそのまま入力してはいけないのでしょうか。この例では比が -1 なので、普通の逆正接は π/4-\pi/4 を返します。この角は反対方向の第 IV 象限を指します。比だけでは、象限を決める符号が失われます。

毎回、次の順番で進めてください。

  1. 絶対値を求める。
  2. 実部と虚部の符号を図に記す。
  3. 基準角を求め、その象限に置く。
  4. 代入して、両方の成分を確認する。

電卓やプログラミング言語の atan2(b,a)\operatorname{atan2}(b,a) という関数は、象限と座標軸上の場合を処理します。引数の順序と、出力がラジアンかどうかを確認してください。引数が一つの逆正接を使う場合は、やはり図が必要です。

逆変換して確認する

極形式から直交形式へ戻すには、二つの成分を別々に計算します。先ほどの例では次のようになります。

a=32cos3π4=32(22)=3a=3\sqrt{2}\cos\frac{3\pi}{4}=3\sqrt{2}\left(-\frac{\sqrt{2}}{2}\right)=-3 b=32sin3π4=32(22)=3b=3\sqrt{2}\sin\frac{3\pi}{4}=3\sqrt{2}\left(\frac{\sqrt{2}}{2}\right)=3

求める結果 3+3i-3+3i に戻りました。この確認なら、象限の誤りをすぐ発見できます。絶対値が正しくても、角が違えば符号も違うからです。

簡単な厳密値を持たない角では、最後の段階まで偏角を丸めないでください。早く丸めると、成分へ戻すときに不要な誤差が入ります。

乗法は拡大して回転する

一方の数の絶対値と偏角を r1r_1θ1\theta_1、もう一方を r2r_2θ2\theta_2 とします。乗法では長さを掛け、回転を足します。

z1z2=r1r2(cos(θ1+θ2)+isin(θ1+θ2))z_1z_2=r_1r_2\left(\cos(\theta_1+\theta_2)+i\sin(\theta_1+\theta_2)\right)

絶対値がともに 2、偏角が π/6\pi/6π/3\pi/3 の二数を考えます。積の絶対値は 4、偏角は π/2\pi/2 です。

z1z2=4(cosπ2+isinπ2)=4iz_1z_2=4\left(\cos\frac{\pi}{2}+i\sin\frac{\pi}{2}\right)=4i

直交形式でも独立に確認できます。元の二数は 3+i\sqrt{3}+i1+3i1+\sqrt{3}i です。

(3+i)(1+3i)=3+3i+i+3i2=4i(\sqrt{3}+i)(1+\sqrt{3}i)=\sqrt{3}+3i+i+\sqrt{3}i^2=4i

i2=1i^2=-1 なので実部は打ち消し合います。どちらの表し方でも答えは同じですが、極形式なら展開する前から直角の回転が見えます。

除法は拡大と回転を逆にする

ゼロでない複素数で割るには、絶対値を割り、偏角を引きます。

z1z2=r1r2(cos(θ1θ2)+isin(θ1θ2))\frac{z_1}{z_2}=\frac{r_1}{r_2}\left(\cos(\theta_1-\theta_2)+i\sin(\theta_1-\theta_2)\right)

たとえば、絶対値 6、偏角 5π/65\pi/6 の数を、絶対値 2、偏角 π/3\pi/3 の数で割ります。結果の絶対値は 3、偏角は π/2\pi/2 なので、商は 3i3i です。

分母の絶対値は 0 であってはいけません。極形式で書いても、ゼロ除算が許されるわけではありません。また、引き算の順序にも注意してください。二番目の数を一番目の数で割れば、倍率も角の差も逆になります。

累乗は同じ操作を繰り返す

複素数を正の整数乗にすることは、同じ乗法を繰り返すことです。絶対値はその累乗になり、偏角にはその数を掛けます。

zn=rn(cosnθ+isinnθ)z^n=r^n(\cos n\theta+i\sin n\theta)

これがド・モアブルの公式です。z=3+iz=\sqrt{3}+i の絶対値は 2、偏角の一つは π/6\pi/6 です。三乗すると次のようになります。

(3+i)3=23(cos3π6+isin3π6)=8i(\sqrt{3}+i)^3=2^3\left(\cos\frac{3\pi}{6}+i\sin\frac{3\pi}{6}\right)=8i

30 度の回転を 3 回行えば 90 度になります。倍率 2 を 3 回掛ければ 8 です。三乗を展開することもできますが、結果が虚軸上にある理由は極形式なら一目で分かります。

OpenStax の極形式の章では、対応する根の計算も扱っています。ここで大切なのは、n ≥ 2 のとき、ゼロでない複素数には異なる n 乗根が複数あることです。一つの角を n で割るだけでは、すべてを列挙できません。

特別な場合を整理する

一周すると角は変わりますが、数は変わりません。θ\thetaθ+2πk\theta+2\pi k は、任意の整数 kk に対して同じ向きを表します。主偏角を求める問題では、指定された区間を使ってください。よく使われるのは (π,π](-\pi,\pi] です。授業によって別の区間を使うので、自分の規約を明記しましょう。

ゼロには定まった向きがありません。 絶対値は 0 です。どの角でも成分は同じ 0 になるため、ゼロに一意の偏角を割り当てる意味はありません。

ラジアンと度を混ぜてはいけません。 一貫して使えば、三角形式ではどちらでも構いません。指数形式 reiθre^{i\theta} ではラジアンを使います。このつながりはオイラーの等式の解説で説明しています。

加法に乗法の規則は使えません。 絶対値と偏角を足しても、複素数の和にはなりません。直交形式に戻して成分を足し、必要なら再び極形式へ変換してください。

一度に一つの判断を練習する

Math Zen の複素数の練習には、極形式とド・モアブルの定理も含まれています。学ぶときは技能を分けましょう。まず象限を特定し、次に絶対値を求め、変換を済ませてから、積や累乗に進みます。

答えを提出する前に、三つの問いを確認してください。原点からの距離は妥当か。向きは演算と一致しているか。直交成分に戻すと出発した数を再現するか。こうして確かめれば、極形式は暗記すべき公式ではなく、計算を目で捉える方法になります。

よくある質問

複素数の極形式とは何ですか?
ゼロでない複素数は z = r(cos θ + i sin θ) と書けます。r は原点からの距離、θ は実軸の正の向きから測った角です。距離を絶対値、角を偏角と呼びます。
なぜ arctan では偏角を間違えることがあるのですか?
比 b/a だけでは象限を特定できないからです。1 + i と -1 - i は比が同じでも向きは反対です。a と b の符号を図で確かめ、正しい象限の角を選ぶか、atan2(b, a) を使ってください。
ゼロにも極形式はありますか?
ゼロの絶対値は 0 で、どの角を使っても表せますが、定まった偏角はありません。絶対値が 0 の複素数で割ることはできません。

実際に解いてみる