複素数の極形式:変換・乗算・除算

数 は、右へ 3、上へ 3 という住所を表します。同時に、北東という向きと、原点から という距離も表します。直交形式と極形式が表す数はまったく同じです。ただし、計算しやすい操作が異なります。
加法には直交形式が便利です。極形式では、乗法が二つの普通の動作、拡大と回転に見えます。そのため、見た目には複雑な累乗も、表し方を変えれば短い計算になります。
虚数単位にまだ慣れていないなら、まず虚数の解説を読んでください。ここでは、その次の実践的な段階である変換、計算、答えの確認に焦点を当てます。
絶対値と偏角は一本の矢印を表す
原点から へ矢印を引きます。水平方向の成分は 、垂直方向の成分は です。矢印の長さを絶対値と呼び、直角三角形から次のように求めます。
偏角は、実軸の正の向きから反時計回りに測る角 です。正の回転は反時計回り、負の回転は時計回りです。一周すれば同じ矢印に戻るので、偏角は一意ではありません。
長さ の矢印の水平成分と垂直成分は、 と です。これらを代入すると極形式が得られます。
本によっては と書きます。この略記は、括弧内の式そのものを意味します。新しい演算ではなく、短い書き方にすぎません。
ここでは極座標の幾何を使いますが、目的は極曲線を描くことではなく、複素数を計算することです。
象限を失わずに変換する
を考えます。まず絶対値を求めます。
実部は負、虚部は正なので、矢印は第 II 象限を向きます。水平距離と垂直距離の大きさが等しいため、基準角は です。したがって必要な偏角は 、つまり 135 度です。
なぜ をそのまま入力してはいけないのでしょうか。この例では比が -1 なので、普通の逆正接は を返します。この角は反対方向の第 IV 象限を指します。比だけでは、象限を決める符号が失われます。
毎回、次の順番で進めてください。
- 絶対値を求める。
- 実部と虚部の符号を図に記す。
- 基準角を求め、その象限に置く。
- 代入して、両方の成分を確認する。
電卓やプログラミング言語の という関数は、象限と座標軸上の場合を処理します。引数の順序と、出力がラジアンかどうかを確認してください。引数が一つの逆正接を使う場合は、やはり図が必要です。
逆変換して確認する
極形式から直交形式へ戻すには、二つの成分を別々に計算します。先ほどの例では次のようになります。
求める結果 に戻りました。この確認なら、象限の誤りをすぐ発見できます。絶対値が正しくても、角が違えば符号も違うからです。
簡単な厳密値を持たない角では、最後の段階まで偏角を丸めないでください。早く丸めると、成分へ戻すときに不要な誤差が入ります。
乗法は拡大して回転する
一方の数の絶対値と偏角を 、、もう一方を 、 とします。乗法では長さを掛け、回転を足します。
絶対値がともに 2、偏角が と の二数を考えます。積の絶対値は 4、偏角は です。
直交形式でも独立に確認できます。元の二数は と です。
なので実部は打ち消し合います。どちらの表し方でも答えは同じですが、極形式なら展開する前から直角の回転が見えます。
除法は拡大と回転を逆にする
ゼロでない複素数で割るには、絶対値を割り、偏角を引きます。
たとえば、絶対値 6、偏角 の数を、絶対値 2、偏角 の数で割ります。結果の絶対値は 3、偏角は なので、商は です。
分母の絶対値は 0 であってはいけません。極形式で書いても、ゼロ除算が許されるわけではありません。また、引き算の順序にも注意してください。二番目の数を一番目の数で割れば、倍率も角の差も逆になります。
累乗は同じ操作を繰り返す
複素数を正の整数乗にすることは、同じ乗法を繰り返すことです。絶対値はその累乗になり、偏角にはその数を掛けます。
これがド・モアブルの公式です。 の絶対値は 2、偏角の一つは です。三乗すると次のようになります。
30 度の回転を 3 回行えば 90 度になります。倍率 2 を 3 回掛ければ 8 です。三乗を展開することもできますが、結果が虚軸上にある理由は極形式なら一目で分かります。
OpenStax の極形式の章では、対応する根の計算も扱っています。ここで大切なのは、n ≥ 2 のとき、ゼロでない複素数には異なる n 乗根が複数あることです。一つの角を n で割るだけでは、すべてを列挙できません。
特別な場合を整理する
一周すると角は変わりますが、数は変わりません。 角 と は、任意の整数 に対して同じ向きを表します。主偏角を求める問題では、指定された区間を使ってください。よく使われるのは です。授業によって別の区間を使うので、自分の規約を明記しましょう。
ゼロには定まった向きがありません。 絶対値は 0 です。どの角でも成分は同じ 0 になるため、ゼロに一意の偏角を割り当てる意味はありません。
ラジアンと度を混ぜてはいけません。 一貫して使えば、三角形式ではどちらでも構いません。指数形式 ではラジアンを使います。このつながりはオイラーの等式の解説で説明しています。
加法に乗法の規則は使えません。 絶対値と偏角を足しても、複素数の和にはなりません。直交形式に戻して成分を足し、必要なら再び極形式へ変換してください。
一度に一つの判断を練習する
Math Zen の複素数の練習には、極形式とド・モアブルの定理も含まれています。学ぶときは技能を分けましょう。まず象限を特定し、次に絶対値を求め、変換を済ませてから、積や累乗に進みます。
答えを提出する前に、三つの問いを確認してください。原点からの距離は妥当か。向きは演算と一致しているか。直交成分に戻すと出発した数を再現するか。こうして確かめれば、極形式は暗記すべき公式ではなく、計算を目で捉える方法になります。
よくある質問
- 複素数の極形式とは何ですか?
- ゼロでない複素数は z = r(cos θ + i sin θ) と書けます。r は原点からの距離、θ は実軸の正の向きから測った角です。距離を絶対値、角を偏角と呼びます。
- なぜ arctan では偏角を間違えることがあるのですか?
- 比 b/a だけでは象限を特定できないからです。1 + i と -1 - i は比が同じでも向きは反対です。a と b の符号を図で確かめ、正しい象限の角を選ぶか、atan2(b, a) を使ってください。
- ゼロにも極形式はありますか?
- ゼロの絶対値は 0 で、どの角を使っても表せますが、定まった偏角はありません。絶対値が 0 の複素数で割ることはできません。


